Yasuo Kuniyoshi Project

岡山大学大学院教育学研究科《国吉康雄記念・美術教育研究と地域創生講座》
 

ご報告

岡山大学大学院教育学研究科《国吉康雄記念・美術教育研究と地域創生講座》が、「岡山県芸術文化賞準グランプリ」を受賞しました。これは、2018年度の活動が対象となっており、国吉祭・出石国吉康雄勉強会・瀬戸内市立、栃木県立、宇城市不知火、熊本県立の各美術館での国吉康雄関連展の企画と運営などが評価されたものです。ご支援をいただいた皆様、本当にありがとうございました!!
 
公益財団法人福武教育文化振興財団様に推薦をいただき、「学生・地域との国吉祭の運営」と「国吉型対話探求型鑑賞普及展覧会の組成と運営」の二つの事業が、公益社団法人企業メセナ協議会認定のメセナ事業「THIS IS MESENAT 2019」に認定されました。

→ THIS IS MESENAT

 

Pick Up!!  

 

国吉祭2019 CARAVAN in 鯉が窪

 

たくさんのご来場ありがとうございました!

シンポジウム

symposium

 


シンポジウム「岡山から文化芸術資源の保存について考える」の開催意図について

 「岡山県は歴史と文化あふれる地域です」~ 岡山県作成のサイトには、こんな言葉が記されています。実際、岡山には170点(2018年5月現在)もの国宝・重要文化財があり、これは伊勢神宮がある三重県に次ぐ規模のもので、文化によって都市・地域プロデュースを行なっている石川県を超えるものです。岡山は古代吉備の遺産を伝える建造物や遺構が多数あり、世界的な絵画コレクションで知られる大原美術館を中心に賑わう倉敷美観地区や、瀬戸内のアートプロジェクトであるベネッセアートサイト直島への玄関口としても知られています。そして、武家庭園の傑作といわれる後楽園周辺(岡山市北区)には文化施設が集中する地区があります。美人画で知られる竹久夢二(1884-1934)を記念・顕彰する美術館や源氏物語絵巻などのコレクションで知られる林原美術館。雪舟などの日本画のコレクションを所蔵する県立美術館やオリエント美術専門の美術館など、公立の美術・博物館もこの地区にあります。他、利用者日本一の県立図書館や音楽ホールや劇場いう文化施設が集中し、岡山市北区は、国内有数の質と量、そしてコンパクトさで際立つ文化地区です。現在、政府は文化芸術推進基本計画において、「文化芸術の多様な価値を活かして、未来をつくる」という方針(平成30年3月6日閣議決定)のもと、文化芸術立国としての指針を示しています。これは、「文化芸術資源を活用し、世界の文化芸術交流のハブとなる」などを目指すものです。しかし、東日本大震災、熊本地震、そして、この7月の豪雨と立て続けの台風被害、そして北海道での震災を目の当たりにした私たちは、私たちの国土がその歴史上、多くの災害に見舞われてきた「災害発生地域」であることを再認識しました。そして、私たちの歴史や暮らしの拠り所ともなる文化財や芸術作品があまりに脆い「宝物」であることを実感したのです。有形無形を問わず、これらの保存は不断の努力を怠った途端、消えてしまう危ういものでもあるからです。先に触れた文化芸術推進基本計画」の前文でも、「我が国の文化芸術資源は、保存技術や材料の確保、伝承者の育成等を含め、長い歴史を通じて各地域の先達の地道な努力により今に受け継がれてきた価値あるものであり、世界に誇るべきものである。これを維持、継承、発展させることはもとより、日本人自身がその価値を十分に認識する必要がある」と謳われています。一方で、2015年に岡山市が実施した調査で、アンケートに回答した市民の多くが文化芸術資源の生活への「よい影響」を認識しながら、その半数が「文化施設を利用しない」とも回答しています。残念ながら、本講座で主催する講義、イベント等で実施した学生、市民へのアンケートからも、日頃の文化芸術資源への関心は高いとは言えず、また岡山市内北区が日本有数の文化芸術資源を有し、文化施設の集中地区という認識は薄いようです。ですが、私たちの暮らす地域には、故あって、今現在、非常に多くの価値ある文化芸術資源を、先人たちから預かっています。だからこそ、懸念されるのは、有事の際、貴重な人類の遺産である文化芸術資源の損失を招きかねないということです。私たちは多くの文化芸術資源を、この時代にこの地域で「預かっている者」として、この宝の適正な保存と、その根拠となる研究を積極的に進めなければなりません。このためにまず、地域の文化芸術資源の価値を地域に発信する取り組みを行うために、岡山スポーツ文化振興財団と本講座によ理、共同で企画されたのがシンポジウム「岡山から文化芸術資源の保存について考える」です。
 本シンポジウムでは、平成30年7月豪雨の被災地で、古文書や書画、個人宛の手紙、写真まで、幅広く「記憶と記録」に関わるレスキュー作業を行なっている「岡山史料ネット」の活動報告と、岡山大学の今津教授が行ってきた被災前の基礎調査が、現状のレスキュー活動にどれだけ有益だったかを。そして、東北、熊本などの被災地に赴き、罹災作品のレスキュー活動を行なっている絵画保存修復家の岩井希久子氏。ニューヨークで歴史的建築物の外装・彫刻の修復などを行ない、第二次世界大戦中、ナチスドイツの大量虐殺の犠牲となったユダヤ人のためのメモリアルなどの制作を行なってきた彫刻家の吉野美奈子氏を招いての対話と総合討議に加え、平成30年7月豪雨の水害の過程、地域学習と防災教育などを研究を行っている岡山大学大学院教育学研究科の松多教授の岡山での災害についての報告などを予定しております。これを機に、地域の文化芸術資源を後世に伝える意義について考えることが、地域の皆様と共にできればと考えております。何卒、多くの皆様に会場にお運びいただけますよう、お願い申し上げます。
 

2018年10月 岡山大学国吉康雄記念・美術教育研究と地域創生講座 才士真司